荒野へ

荒野へ

荒野へ

アラスカの荒野で孤独に餓死した彼=クリス・マッカンドレスは、旅人だった。彼は、偏屈だけれど魅力的な人柄で、出会った人々に強い印象を残しては、また次なる空の下へと旅立っていった。まるで映画のようだなあ。と思ったら、本当に映画になるそうな。
http://cinematoday.jp/page/N0007771
一部の人々はなぜ放浪し、荒野を目指すのか。それが本書のテーマ。今の生活から逃げたかったり、生きていることの実感がほしかったり、見知らぬ世界への好奇心だったり、若さ故の闇雲な情熱だったり、いろいろあるんだろうけど、彼の場合はどうだったのか。結局わかったようなわからないような。ただ、こんな一文がヒントになりそう。

 ウッドスン・ハイスクールのクロスカントリーのチームメイト、アンディー・ホロヴィッツは感慨をこめて、こう言っている。クリスは「生まれてくる世紀をまちがえたんだ。彼は現代社会で許されている以上の冒険と自由をもとめていた」と。アラスカにやってくる途中で、マッカンドレスは地図上の空白地を発見し、地図に記載されていない地域を放浪したがっていた。だが、一九九二年には、地図上の空白地は、アラスカにも、どこにもなかった。ところがクリスは奇妙な理屈で、このジレンマにたいするみごとな解答を見つけだしていた。きっぱりと地図を捨てたのである。ほかのどこにも空白地がないとしても、地図を捨てることによって、彼の頭のなかでは、大地は未知のまま残っているわけだ。(本書239ページ)