残忍であればあるほど

世田谷一家殺人事件―侵入者たちの告白

世田谷一家殺人事件―侵入者たちの告白

本書に書かれていることの信憑性については何とも言えない(同じようにジャーナリストが事件を追った『桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)』みたいに記者が犯人の居場所をつきとめて撮影までできていればよかったんだけど)。ただ、著者が描き出した犯人像についてはリアリティを感じた。

 彼らに精神的な何かは必要ではないのである。痴情、怨恨、あるいは復讐が原因となった犯罪は一切ない。
 またグループ内では相互に競争心が芽生える、ともいう。だからこそ、大きな犯罪をやりとげて自己顕示を行うのである。これが彼らを特殊なグループとして際立たせている。思いのほかきついグループ内の縛りも、彼らを自己顕示に駆りたてる。
 そして、もう一つ、とりわけ重要なのは、このグループが犯罪を行うのは、この日本国内のみである、という点である。そして、その犯罪が残忍であればあるほど、彼らはグループ内で優位な地位に立つことができるというのだ。
 メンバーには留学生が多いだけに、それなりの頭脳は有している。そして、極端な反日精神をもちあわせているわけではない。ただ、彼らの犯罪にたいして、この国があまりに無防備なのである。
 自分たちをいつまでも下級外国人扱いする「あの目がいやで」積極的にグループに加わり、やがて中心になっていった韓国人がいた。その一方でセキュリティーに無頓着でばかみたいに人を信じる日本人からカネを奪いとるためにグループ入りしたという中国人もいた。(本書 p143)

シリアルキラーをヒーロー視する精神性と似ている。幼稚だけど、そういう精神性は確かに存在する。